アトピー性皮膚炎はどんな病気?
アトピー性皮膚炎と診断するには、「湿疹」に加えて、「かゆみ」があることが不可欠です。「湿疹」には様々な種類があります。赤いもの、カサカサ乾燥しているもの、プツプツ盛り上がっているもの、ジュクジュク液体が出ているもの、ゴワゴワ皮膚が厚くなっているものなどです。しかも、これらがいくつか混在している場合もあります。
現在、アトピー性皮膚炎の原因として考えられているメカニズムは、「皮膚のバリア機能障害」です。
遺伝的な要因、あるいは環境的な要因などにより皮膚がもろくなり、皮膚の水分が蒸発し、乾燥しやすくなります。
更に、壊れた皮膚のすき間からアレルゲン(ダニ・カビなど)や刺激物(汗・細菌など)が侵入し皮膚の炎症を引き起こしてしまうのです。炎症は「かゆみ」をもたらし、「かゆみ」により皮膚を掻くと、更にバリアを破壊して外からの刺激が入りやすくなる、という悪循環になってしまいます。
「この湿疹は乳児湿疹?それともアトピー性皮膚炎?」など、気になる症状があれば、お気軽にご相談ください。
小児のアトピー性皮膚炎
日本では、5-20%くらいのお子さんがアトピー性皮膚炎であると報告されています。しかし、重症度には大きくばらつきがあり、その80%は軽症で、全身に湿疹が広がっている重症の方は数%程度です。
「かゆみ」がひどいと、夜眠れず昼間に眠気が残り、睡眠障害が長期間続くと成長ホルモンの量が減り身長の伸びが鈍くなることもあります。
日中の集中力低下のため、授業に集中できない方もいらっしゃいます。
また、お子さんの世話をするご家族も眠れなくなってしまうこともあります。
アトピー性皮膚炎の治療
アトピー性皮膚炎の治療には、大きく3つの柱があります。
当院では以下のすべてに関して図などをお示ししながら指導しています。
①アトピー性皮膚炎を悪化させる要因・悪化因子を取り除く
アトピー性皮膚炎の原因・悪化因子は、季節や年齢、生活スタイルなどにより異なります。食物・汗・乾燥・掻破(かきむしること)・よだれ・石けん・洗剤・ダニ・ペット・ストレスなどさまざまな原因・悪化因子があります。しかし、人それぞれ要因は異なり、1つであるとは限りません。更に、その要因を取り除いてもすぐに湿疹が改善するわけでもありません。まずは、次にお話しするスキンケアやステロイドを始めとした薬物療法によって、皮膚の炎症を落ち着けてから対応するのが良いと思います。
②スキンケア
スキンケアとは、「皮膚を清潔に保つ」ことに加えて、「皮膚の乾燥を防ぐ」ことによって、皮膚を健康な状態に保つことを意味します。皮膚を清潔に保つには、全身を石けんで泡立てて洗います。黄色ブドウ球菌などの雑菌や汗などのアレルギー悪化因子を取り除くには、お湯だけでは不十分なことが多く、石けんを使って洗います。皮膚の乾燥を防ぐには、洗ったらなるべく早く塗り薬をつけます。具体的なスキンケアの方法は、外来にて詳しくご説明いたします。
③薬物療法
薬物療法の中心は、ステロイド外用薬による皮膚の炎症抑制となります。具体的には、最初は湿疹が残っているうちは毎日ステロイド外用剤をしっかりと使用して、皮膚を完全につるつるの状態にします。ステロイド外用剤の主な副作用は、長期連用により皮膚が薄くなることです。これを避けるために、湿疹の再発がなければ、例えば2日おき、3日おきというようにステロイド外用剤の使用回数を徐々に減らしていきます。そうすることで、副作用を出さずに、最終的には保湿剤だけで皮膚のつるつるが維持できるようになります。この減らし方にコツがいります。また、重症度には個人差がありますので、当院ではそれぞれの患者様に合わせたスケジュール、ステロイドのランク、塗り方、塗る量をご説明いたします。また、ステロイド外用剤の塗り方に加えて、減らし方、やめ方なども説明いたしますのでご相談ください。
ステロイドプロアクティブ療法
ステロイドの治療法に関してもう少し詳しくお話しします。
ステロイドの治療法には、大きくプロアクティブ療法とリアクティブ療法の二つに分けられます。
プロアクティブ療法は、「皮膚炎がひどくなった時だけでなく、消失した後も定期的にステロイド外用剤を塗布することで皮膚炎の再発を未然に抑制し、最終的に保湿剤によるスキンケアのみでツルツルを維持する治療」です。
具体的には、まずステロイド外用剤を連日塗布して皮膚の炎症を抑えます。
安定した後も保湿剤を塗るだけでなく、ステロイドを塗る日を設け皮膚炎の再発を防ぎつつ、徐々にステロイドを塗る日の間隔を長くして保湿剤のみの日を増やします。この治療法は、副作用を避けつつ、長期に良好な状態を維持することができます。
それに対して、リアクティブ療法は、「皮膚炎がひどくなった時にだけステロイド外用剤を塗布し、皮膚炎が消失し寛解状態になったら保湿剤だけで維持し、皮膚炎の再発があった場合のみ再びステロイド外用剤を塗布する治療」です。軽症の場合は、この治療方法で十分にコントロールが可能です。
いずれの方法を選択するかは、重症度にもよりますので、外来で時間をかけてご説明いたします。